2019年12月に実施された「第69回計量士国家試験問題」の解答と解説になります。
- 問題文及び解答は経済産業省のHPにある「過去の計量士国家試験問題」から引用しています。
- 「e-Gov法令検索」では法令の全文を閲覧することができます。
- 解説は私の見解になります。「解説が間違っている!」「分かりにくい!」などありましたら、コメント頂けると助かります。
どうやって勉強を進めればいいのかわからない方はこちらの記事も読んでみて下さい。
また、おすすめ参考書・問題集も紹介しているので、まだ買っていない方は読んでみてください。
- 問1 環境基本法
- 問2 大気汚染防止法(1)
- 問3 大気汚染防止法(2)
- 問4 水質汚濁防止法(1)
- 問5 水質汚濁防止法(2)
- 問6 有機化学(芳香族化合物)
- 問7 有機化学(共役酸・塩基)
- 問8 有機化学(物質の安定性)
- 問9 有機化学(物質の精製)
- 問10 無機化学(水素)
- 問11 有機化学(溶媒抽出)
- 問12 有機化学(原子の軌道)
- 問13 有機化学(物質の反応)
- 問14 基礎化学(化学の歴史)
- 問15 物理化学(蒸発熱)
- 問16 無機化学(化合物の有害性)
- 問17 X線回折
- 問18 基礎化学(原子と元素)
- 問19 水の状態変化
- 問20 無機化学(結晶格子)
- 問21 基礎化学(化学反応式の計算)
- 問22 基礎化学(物質量の計算)
- 問23 無機化学(電池)
- 問24 基礎化学(化学反応式の計算)
- 問25 基礎化学(安定同位体)
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問1 環境基本法
問1
環境基本法第2条(定義)の記述の(ア)~(ウ)に入る語句の組合せとして、正しいものを一つ選べ。
第2条 この法律において「環境への負荷」とは、(ア)により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
2 この法律において「地球環境保全」とは、(イ)による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
3 この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、(ウ)に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第21条第1項第1号において同じ。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。
- (ア)人の活動 (イ)人の活動 (ウ)事業活動その他の人の活動
- (ア)人の活動 (イ)人の活動 (ウ)人の活動
- (ア)人の活動 (イ)事業活動その他の人の活動 (ウ)人の活動
- (ア)事業活動その他の人の活動 (イ)人の活動 (ウ)事業活動その他の人の活動
- (ア)事業活動その他の人の活動 (イ)事業活動その他の人の活動 (ウ)人の活動
正解と解説
1 (ア)人の活動 (イ)人の活動 (ウ)事業活動その他の人の活動
【法令解説】環境基本法とは?では環境基本法についてまとめています。わからない方はぜひ読んでみてください。
問2 大気汚染防止法(1)
問2
大気汚染防止法第2条(定義等)に規定する「ばい煙」に該当しない物質を次の中から一つ選べ。
- 燃料その他の物の燃焼に伴い発生するいおう酸化物
- 物の燃焼、合成、分解その他の処理(機械的処理を除く。)に伴い発生するメタン
- 物の燃焼、合成、分解その他の処理(機械的処理を除く。)に伴い発生する弗化水素
- 物の燃焼、合成、分解その他の処理(機械的処理を除く。)に伴い発生する鉛
- 物の燃焼、合成、分解その他の処理(機械的処理を除く。)に伴い発生するカドミウム
正解と解説
2 物の燃焼、合成、分解その他の処理(機械的処理を除く。)に伴い発生するメタン
【法令解説】大気汚染防止法とは?では大気汚染防止法についてまとめています。わからない方はぜひ読んでみてください。
問3 大気汚染防止法(2)
問3
以下の(ア)~(オ)の記述のうち、大気汚染防止法第1条の目的として規定されている事項として、正しいものがいくつあるか、次の1~5の中から一つ選べ。
(ア)工場及び事業場における事業活動並びに建築物等の解体等に伴うばい煙、揮発性有機化合物及び粉じんの排出等の規制。
(イ)水銀に関する水俣条約の的確かつ円滑な実施を確保するため工場及び事業場における事業活動に伴う水銀等の排出の規制。
(ウ)有害大気汚染物質対策の実施の推進。
(エ)自動車排出ガスの許容限度を定めること。
(オ)大気の汚染に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めること。
- 1個
- 2個
- 3個
- 4個
- 5個
正解と解説
5 5個
問4 水質汚濁防止法(1)
問4
水質汚濁防止法第2条(定義)第2項第1号において、人の健康に係る被害を生じるおそれがある物質として政令で定める物質(「有害物質」という。)に該当しない物質を、次の中から一つ選べ。
- シアン化合物
- 六価クロム化合物
- 四塩化炭素
- ヒドラジン
- ベンゼン
正解と解説
4 ヒドラジン
【法令解説】水質汚濁防止法とは?では水質汚濁防止法についてまとめています。わからない方はぜひ読んでみてください。
問5 水質汚濁防止法(2)
問5
水質汚濁防止法第3条(排水基準)の記述の(ア)~(オ)に入る語句の組合せとして、正しいものを一つ選べ。
第3条 排水基準は、排出水の(ア)(熱によるものを含む。以下同じ。)について、環境省令で定める。
2 前項の排水基準は、有害物質による(ア)にあつては、排出水に含まれる(イ)について、(ウ)ごとに定める許容限度とし、その他の(ア)にあつては、前条第2項第2号に規定する項目について、項目ごとに定める許容限度とする。
3 都道府県は、当該都道府県の区域に属する公共用水域のうちに、その(エ)条件から判断して、第1項の排水基準によつては人の健康を保護し、又は生活環境を保全することが十分でないと認められる区域があるときは、その区域に排出される排出水の(ア)について、政令で定める基準に従い、条例で、同項の排水基準にかえて適用すべき同項の排水基準で定める許容限度よりきびしい許容限度を定める排水基準を定めることができる。
4 前項の条例においては、あわせて当該区域の範囲を明らかにしなければならない。
5 都道府県が第3項の規定により排水基準を定める場合には、当該都道府県知事は、あらかじめ、(オ)に通知しなければならない。

正解と解説
3 (ア)汚染状態 (イ)有害物質の量 (ウ)有害物質の種類 (エ)自然的、社会的 (オ)環境大臣及び関係都道府県知事
問6 有機化学(芳香族化合物)
問6
濃硝酸と濃硫酸の混合物による一置換ベンゼンのモノニトロ化反応における、置換基Xの配向性に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。ただし、反応式中生成物の構造式は、オルト位、メタ位またはパラ位のいずれかにニトロ基が一つ置換されていることを示す。また、反応はそれぞれ最適条件で行うものとする。

- トルエン(X=CH3)は主にオルト体とパラ体の混合物を与える。
- 安息香酸メチル(X=COOCH3)は主にメタ体を与える。
- アセトアニリド(X=NHCOCH3)は主にメタ体を与える。
- クロロベンゼン(X=Cl)は主にオルト体とパラ体の混合物を与える。
- (トリフルオロメチル)ベンゼン(X=CF3)は主にメタ体を与える。
正解と解説
3 アセトアニリド(X=NHCOCH3)は主にメタ体を与える。
ベンゼン環にすでに存在している置換基は、反応性及び反応の配向性に影響を与えます。
主な置換ベンゼンにおけるニトロ化の配向性はこちらです。

1. メタ配向性不活性化基
- -N(CH3)3
- -NO2
- -CO2H
- -CN
- -CO2CH3
- -COCH3
- -CHO
2. オルト-パラ配向性不活性化基
- -F
- -Cl
- -Br
- -I
3. オルト-パラ配向性活性化基
- -CH3
- -OH
- -NHCOCH3
- 正しい。トルエン(X=CH3)は主にオルト体とパラ体の混合物を与える。
- 正しい。安息香酸メチル(X=COOCH3)は、ーCOOCH3が電子吸引性であるため、主にメタ体を与える。
- 誤り。アセトアニリド(X=NHCOCH3)は、ーNHCOCH3が電子供与性であるため、o、p配向で、主にオルト体とパラ体の混合物となる。
- 正しい。クロロベンゼン(X=Cl)は、ーClが電子供与体があるため、やや活性のo、p配向で、主にオルト体とパラ体の混合物となる。
- 正しい。(トリフルオロメチル)ベンゼン(X=CF3)は、ーCF3が電子吸引性であるため、主にメタ体を与える。
問7 有機化学(共役酸・塩基)
問7
次のアンモニアを含むアミン類(ア)~(カ)について、それぞれの共役酸のpKa値(水中、25℃)の大小関係として、誤っているものを一つ選べ。ただし、pKa=ーlogKa(Ka:イオン強度が0のときの酸解離定数)とする。

- (ア)>(イ)
- (イ)<(ウ)
- (ウ)>(エ)
- (エ)<(オ)
- (オ)>(カ)
正解と解説
2 (イ)<(ウ)
酸の強さは水溶液中での解離のしやすさで決まります。塩酸は、水素イオンを放出しやすいので強酸で、酢酸は放出しにくいので弱酸です。この解離のしやすさを表す数が酸解離定数(Ka)です。これはそれぞれの酸に固有の定数です。
M-hubより引用
酸性が強いとpKaが小さく、アルカリ性が強くなると値は大きくなります。
今回の場合、Nの非共有電子対(孤立電子対)濃度が高いとアルカリ性が強くなってpKaが大きくなり、濃度が低くなると酸性が強くなってpKaが小さくなります。
- 正しい。CH3CH2-はH-よりもやや電子供与性(電子を与える)があるため、(ア)の方がNの非共有電子対濃度は高くなります。
- 誤り。ベンゼン環は電子吸引性(電子を受け取る)が強いため、(イ)の方がNの非共有電子対濃度は高くなります。
- 正しい。Cl-は電子吸引性が強いため、(エ)の方がNの非共有電子対濃度は低くなります。
- 正しい。Cl-の方がH3CO-より電子吸引性が強いので、(エ)の方がNの非共有電子対濃度は低くなります。
- 正しい。-NO2の方がNの非共有電子対をより強く吸引するため、(カ)の方がNの非共有電子対濃度は低くなります。
問8 有機化学(物質の安定性)
問8
次の炭素陰イオン(ア)~(エ)の安定性の大きい順として、1~5の中から正しいものを一つ選べ。ただし、炭素陰イオンは、いずれも気相または代表的な非プロトン性極性溶媒であるジメチルスルホキシド中で生成されたものとする。

- (ア)>(イ)>(ウ)>(エ)
- (イ)>(ウ)>(エ)>(ア)
- (ウ)>(イ)>(ア)>(エ)
- (エ)>(ウ)>(イ)>(ア)
- (ウ)>(エ)>(イ)>(ア)
正解と解説
4 (エ)>(ウ)>(イ)>(ア)
炭素イオンの安定性は「電荷の偏り」で決まります。電子が偏っていない(=非局在化)状態の方が安定です。
(ア)CH3の炭素陰イオンは、固定され局在化しているので、最も安定性が小さいです。
(イ)-CH2はベンゼンの炭素と二重結合を図のように作ることができますが、H同士の立体障害のため、このような非局在化されることは困難です。しかし、非局在化が全くされないということではないので、(ア)よりは安定であるといえます。
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(ウ)図のように陰イオンが非局在化する2つの場合があるため安定です。
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(エ)図のように陰イオンが非局在化する3つの場合があるため(ア)、(イ)、(ウ)よりも安定です。
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以上から4.(エ)>(ウ)>(イ)>(ア)が正解です。
問9 有機化学(物質の精製)
問9
不純物を少量含む物質の純度を高めるための方法に関して、次に示した組合せの中から、誤っているものを一つ選べ。

正解と解説
3 塩化ナトリウム 塩化マグネシウム 水溶液の電気分解
- 正しい。「蒸留」とは沸点の違いによって純度を高める操作です。液化した窒素の沸点は-196℃、酸素の沸点は-183℃です。この沸点の違いによって純度を高めることができます。
- 正しい。「昇華」とは固体が液体にならずに、直接気体になることです。常温常圧下で昇華性を持つ物質は「よう素」、「二酸化炭素(ドライアイス)」、「ナフタレン」、「シュウ酸」などが挙げられます。したがって、加熱によりよう素を昇華させることで、少量のよう素カリウムから純度を高めることができます。
- 誤り。水溶液をアルカリ性にすると、難溶性の水酸化マグネシウムが生成し塩化ナトリウムの純度を高めることができます。
- 正しい。再結晶とは、粗結晶から不純物を取り除いて純度の高い結晶を作り出す操作のことです。硝酸カリウムは温度によって溶解度(100gの水に溶ける量)が大きく変化します。高温の水に飽和している硝酸カリウムは、冷却すると結晶となって取り出すことができます。一方で、塩化ナトリウムの溶解度は温度を変えてもほとんど変化しません。したがって、高温の水に飽和させた後、冷却して硝酸カリウムを再結晶させると、硝酸カリウムの純度を高めることができます。
- 正しい。クロマトグラフィーとは固定相と移動相の相互作用により、試料中の化学成分を分離するための方法です。シリカゲルは表面のシリノール基が水素結合能を持っているので、移動相中の水素結合を吸着します。o-ニトロフェノールは分子内で水素結合をしていますが、p-ニトロフェノールは、分子間で水素結合しているため、吸着しにくいのはo-ニトロフェノールです。したがって、こちらが先に通過し分離することになります。
問10 無機化学(水素)
問10
水素の単体および化合物に関する次の記述の中から、下線部に誤りを含むものを一つ選べ。
- 常温常圧で安定な水素の単体はH2のみであり、同素体は知られていない。
- 自然界に存在する水素(H2)2.000 gの分子数は、6.022×1023個よりも少ない。
- 水素(H2)は、ニッケルを不均一触媒として、エチレン(エテン)に付加してエタンを与える。
- 14族元素の水素化合物CH4、SiH4、GeH4、SnH4は、分子量の大きいものほど沸点が高くなる。
- 常温常圧の第2周期元素の水素化合物LiH、NH3、H2O、HF中の結合は全て共有結合である。
正解と解説
5 常温常圧の第2周期元素の水素化合物LiH、NH3、H2O、HF中の結合は全て共有結合である。
NH3、H2O、HF中の結合は全て共有結合ですが、LiHはイオン結合です。

問11 有機化学(溶媒抽出)
問11
水にわずかに溶け、ジエチルエーテルによく溶ける非電解質Aの水溶液からジエチルエーテルを使って溶媒抽出を行うとき、ジエチルエーテル相、水相のそれぞれにおけるAの濃度をCe(g L-1)およびCw(g L-1)と表すと、分配比DはD=Ce/Cwで示される。W0(g)のAを溶かしたVw(mL)の水溶液をVe(mL)のジエチルエーテルで抽出したとき、水溶液中に残っているAの質量W(g)を求める式として、正しいものを一つ選べ。ただし、Ce>Cwであり、抽出後の溶液の体積はジエチルエーテル相、水相ともに変わらないものとする。

正解と解説

抽出後、ジエチルエーテルに残る非電解質Aは、(W0-W)[g]、水溶液に残るAはW[g]であるので、次の式が成立します。
D={(W0-W)/Ve}/(W/Vw)
これを変形させると、
W=VW/(VW+DVe)×W0
となって、2が正解
問12 有機化学(原子の軌道)
問12
下記の構造式において、sp2混成軌道をとる炭素原子の個数として、正しいものを一つ選べ。

- 2個
- 4個
- 5個
- 6個
- 8個
正解と解説
4 6個
sp2混成軌道は、2s軌道と2p軌道が混成して、平面でお互いに120℃方向に広がった軌道で、炭素では二重結合が見られます。したがって、ベンゼン環にある6個の炭素がsp2混成軌道を取ります。

問13 有機化学(物質の反応)
問13
カルボニル化合物の反応に関する(ア)~(エ)の記述の中から、正しい記述を全て選んでいるものを1~5の中から一つ選べ。
(ア)アセトアルデヒドのアルドール(Aldol)反応では、主生成物として炭素数4のカルボン酸が得られる。
(イ)グリニャール(Grignard)反応は水中で行われる。
(ウ)クレメンゼン(Clemmensen)還元は酸性下で行われる。
(エ)ベンズアルデヒドのカニッツァーロ(Cannizzaro)反応による生成物のうちの一つは、ベンジルアルコールである。
- (ア)
- (イ)
- (イ)と(エ)
- (ウ)と(エ)
- (ア)と(イ)と(ウ)
正解と解説
4 (ウ)と(エ)
(ア)アルドール(Aldol)反応とは・・・
アセトアルデヒドとアルコール溶媒+水酸化ナトリウムのような塩基性条件下で、アセトアルデヒドがアルドール(アルデヒド+アルコール)に変化する反応をアルドール反応という。
アルドール反応ではカルボン酸(R-COOH)は生成されないので、誤り。
(イ)グリニャール(Grignard)反応とは・・・
ハロゲン化アルキル(アルケニル、アリール)が、無水エーテルやテトラヒドロフラン(THF)溶媒中で金属マグネシウムと反応してハロゲン化アルキルマグネシウムを生成する反応をグリニャール反応という。
グリニャール反応は無水エーテルやテトラヒドロフラン(THF)溶媒中で起こるため、誤り。
(ウ)クレメンゼン(Clemmensen)還元とは・・・
亜鉛アマルガムー塩酸などの強酸性の溶媒を用いて、ケトンやアルデヒドのカルボニル基(-CO-)を還元してメチレン基(-CH2-)にする反応をクレメンゼン還元という。
クレメンゼン還元は酸性下で行われるため、正しい。
(エ)カニッツァーロ(Cannizaro)反応とは・・・
水素原子とは反応していない炭素原子を含むアルデヒドを、塩基性条件で加熱すると、カルボン酸とアルコールが生成する反応をカニッツァーロ反応という。
ベンズアルデヒドのカニッツァーロ反応は、安息香酸とベンジルアルコールが生成するため、正しい。
問14 基礎化学(化学の歴史)
問14
下に挙げた4名の化学者と代表的業績(ア)~(エ)との組合せとして、正しいものを一つ選べ。
代表的業績
(ア)導電性高分子の発見
(イ)ベンゼンの構造式の提唱
(ウ)ビニロンの合成法の発明
(エ)硝酸の工業的製法の発明

正解と解説
1 (ア) (イ) (ウ) (エ)
問15 物理化学(蒸発熱)
問15
エタノールは、1気圧で78.3℃の沸点を示す。この温度におけるエタノールの蒸発熱が39.3 kJ mol-1であるとすると、蒸発エントロピーは幾らか。次の中から最も近いものを一つ選べ。
- ー502 J K-1 mol-1
- ー112 J K-1 mol-1
- 0 J K-1 mol-1
- 112 J K-1 mol-1
- 502 J K-1 mol-1
正解と解説
4 112 J K-1 mol-1
エントロピーとは、絶対温度Tの物体が熱量Qを受けたとき、物体のエントロピーはQ/Tだけ増し、熱量Q’を放出するときエントロピーはQ’/Tだけ減少すると定める。
コトバンクより引用
S=Q/T=39.3×1000J mol-1 / (273+78.3) K = 112 J K-1 mol-1
となります。
問16 無機化学(化合物の有害性)
問16
化合物の有害性などに関する次の記述の中から、正しいものを一つ選べ。
- 三酸化二ひ素は両性化合物であり、塩基と反応して生成する亜ひ酸塩も一般に有毒である。
- 酢酸鉛(Ⅱ)は有機金属化合物であり、アンチノック剤としてガソリンに添加され、鉛汚染の原因となった。
- ジメチル水銀は脂溶性が高く生体組織に取り込まれにくいため、無機水銀化合物と異なり人体には無害である。
- 酸化クロム(Ⅲ)は、水溶液がクロムめっきのめっき液などに用いられるが、強い酸化力のため、皮膚や粘膜に付着すると炎症などを起こす。
- 硫化カドミウムは土壌中では酸化的な環境で生成し、水溶性が高いため、容易に植物に吸収される。
正解と解説
1 三酸化二ひ素は両性化合物であり、塩基と反応して生成する亜ひ酸塩も一般に有毒である。
2~5は誤りです。
2.アンチノック剤には、四エチル鉛(Pb(CH3CH2)4)が添加されています。
3.ジメチル水銀は脂溶性が高く生体組織に取り込まれやすいため、人体に有害です。
4.酸化クロム(Ⅲ)ではなく、酸化クロム(Ⅵ)です。
5.硫化カドミウムは土壌中では還元的な環境で生成し、水溶性が低いため、容易には植物に吸収されません。
問17 X線回折
問17
下図のように、波長λのX線をθの角度で結晶に入射したとき、X線回折測定において回折ピークが出現する条件式として、正しいものを一つ選べ。ただし、dは面間隔、nは自然数とする。また、回折ピークは、反射したX線の位相が一致して互いの波を強め合うときに現れるものとする。

- 2dsinθ=nλ
- sinθ/d=nλ
- dcosθ=nλ
- cosθ/2d=nλ
- d/cosθ=nλ
正解と解説
1 2dsinθ=nλ
以上の式は「ブラッグの式」と呼ばれ、X線回折の原理となっています。X線回折法は結晶構造を推定することのできる測定手法です。

問18 基礎化学(原子と元素)
問18
炭素とけい素に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。
- 炭素原子は互いに共有結合で結合し、六員環を形成することができる。
- 一般にダイヤモンドは絶縁体であるが、黒鉛(グラファイト)は電気伝導性をもつ。
- けい素は地殻中で炭素よりも存在度の小さい元素である。
- けい素ーけい素の単結合は、炭素ー炭素の単結合よりも結合エネルギーが小さい。
- けい素単体の結晶は、常温常圧でダイヤモンド型の結晶構造をとる。
正解と解説
3 けい素は地殻中で炭素よりも存在度の小さい元素である。
けい素(27.7wt%)は、地殻中で炭素(0.03wt%)よりも存在度の大きい元素です。
問19 水の状態変化
問19
水の状態変化に関する次の記述の中から、誤っているものを一つ選べ。
- 水は三重点において固体、液体、気体が共存する。
- 水の沸点は、大気圧条件において硫化水素の沸点よりも高い。
- 水の融点は、10 MPaの圧力条件下で0℃よりも高くなる。
- 水の飽和蒸気圧は、大気圧条件で0℃から100℃までの温度上昇に伴って高くなる。
- 水は、超臨界状態で加圧しても状態変化しない。
正解と解説
3 水の融点は、10 MPaの圧力条件下で0℃よりも高くなる。
温度と圧力の変化で物質がどういう状態になるのかを表したものを「状態図」といいます。水の状態図はこちらです。

問20 無機化学(結晶格子)
問20
図に示す結晶格子の格子面の面指数(ミラー指数)として、正しいものを一つ選べ。

- (200)
- (110)
- (111)
- (102)
- (221)
正解と解説
2 (110)
ミラー指数とは、結晶面または空間格子の格子面を表示するのに用いられる指数。結晶面が結晶軸 a,b,c を a/h,b/k,c/l で切る平面に平行であるとき,h,k,l は常に有理数となるが,これらに一定数を乗じて互いに素な整数としたものをミラー指数といい,(hkl) で表わす。
コトバンクより引用
a, b軸の切片は同じで1とし、c軸とは平行です。したがって、(1, 1, ∞)となり、その逆数は(1/1, 1/1, 0)=(1,1,0)となります(∞の逆数は0)。
問21 基礎化学(化学反応式の計算)
問21
硫酸酸性水溶液中での過マンガン酸カリウムとしゅう酸との反応式
2KMnO4 + x(COOH)2 + 3H2SO4 → 2MnSO4 + K2SO4 + yCO2 + zH2O
における係数x、yおよびzの和として、正しいものを一つ選べ。
- 19
- 21
- 23
- 25
- 27
正解と解説
3 23
H, C, Oについて、それぞれ左右の原子数の等式をたてます。
Hについて、2x+6=2z
Cについて、2x=y
Oについて、8+4x+12=8+4+2y+z
これらの式を解くと、x=5, y=10, z=8
x+y+z=23
となるので、3が正解です。
問22 基礎化学(物質量の計算)
問22
20℃において、(ア)~(オ)の操作で沈殿を生じるものはいくつあるか。その数を1~5の中から一つ選べ。ただし、混合前の各水溶液の物質量濃度(モル濃度)は0.1 mol L-1とし、過飽和は考えないこととする。
(ア)硫酸銅(Ⅱ)水溶液と水酸化ナトリウム水溶液の等量を混合する。
(イ)塩化ナトリウム水溶液と炭酸カリウム水溶液の等量を混合する。
(ウ)塩化カルシウム水溶液と炭酸ナトリウム水溶液の等量を混合する。
(エ)臭化カリウム水溶液と硝酸銀水溶液の等量を混合する。
(オ)塩化鉄(Ⅲ)水溶液とアンモニア水溶液の等量を混合する。
- 1個
- 2個
- 3個
- 4個
- 5個
正解と解説
4 4個
(ア)CuSO4+2NaOH → Cu(OH)2+Na2SO4
したがって、水酸化銅(Cu(OH)2)の沈殿が生成します。
(イ)塩化ナトリウム(NaCl)と炭酸カリウム(K2CO3)は反応しないため、沈殿は生じません。
(ウ)CaCl2+Na2CO3→CaCO3+2NaCl
したがって、炭酸カルシウム(CaCO3)の沈殿が生じます。
(エ)KBr+AgNO3→AgBr+KNO3
したがって、臭化銀(AgBr)の沈殿が生成します。
(オ)FeCl3+3NH4OH→Fe(OH)3+3NH4Cl
したがって、水酸化鉄(Fe(OH)3)の沈殿が生成します。
以上から4. 4個が正解です。
問23 無機化学(電池)
問23
次の記述の下線部(ア)~(エ)に関する正誤の組合せの中から、正しいものを一つ選べ。
ダニエル電池 Zn | ZnSO4 (a=0.01) || CuSO4 (a=1) | Cu (a:活量) が放電するとき、正極の(ア)銅電極では(イ)酸化反応が起こる。このとき、25℃におけるこの電池の初期の起電力は、標準起電力(ウ)1.10 Vよりも(エ)大きくなる。ただし、Zn2+ + 2e– ⇄ Zn および Cu2+ + 2e– ⇄ Cu の標準電極電位は、25℃でそれぞれ-0.763 V および +0.337 V であり、液間電位は無視できるものとする。
- (ア)正 (イ)正 (ウ)誤 (エ)誤
- (ア)誤 (イ)誤 (ウ)正 (エ)正
- (ア)正 (イ)誤 (ウ)正 (エ)誤
- (ア)誤 (イ)正 (ウ)正 (エ)誤
- (ア)正 (イ)誤 (ウ)正 (エ)正
正解と解説
5 (ア)正 (イ)誤 (ウ)正 (エ)正
(ア)正しい。
(イ)誤り。正しくは還元反応です。
(ウ)正しい。
(エ)正しい。
以上から5が正解です。
問24 基礎化学(化学反応式の計算)
問24
メタン、アセチレン、ブタンをそれぞれ1g燃焼させるのに必要な酸素量の多い順として、正しいものを一つ選べ。なお、燃焼は化学量論的に進み、生成物は二酸化炭素と水のみとする。また、炭素、水素、酸素の原子量をそれぞれ12、1、16とする。
- メタン > アセチレン > ブタン
- メタン > ブタン > アセチレン
- アセチレン > ブタン > メタン
- ブタン > メタン > アセチレン
- ブタン > アセチレン > メタン
正解と解説
2 メタン > ブタン > アセチレン
メタン、アセチレン、ブタンそれぞれの燃焼式から1g燃焼させるのに必要な酸素量を求めます。
メタン:CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2O
CH4=16g, 2O2=2×32g
したがって、メタン1gに必要な酸素量は4g
アセチレン:C2H2 + 5/2O2 → 2CO2 + H2O
C2H2=26g, 5/2O2=2.5×32g
したがって、アセチレン1gに必要な酸素量は3.1g
ブタン:C4H10 + 6.5O2 → 4CO2 + 5H2O
C4H10=58g, 6.5O2=6.5×32g
したがって、ブタン1gに必要な酸素量は3.6g
以上から、メタン>ブタン>アセチレンの順で酸素量が大きい。
問25 基礎化学(安定同位体)
問25
塩素には質量数35と37の安定同位体(35Cl、37Cl)が存在するため、塩素分子(Cl2)は35Cl35Cl、35Cl37Cl、37Cl37Clの三つの分子種からなる。35Clと37Clの存在比が3:1である場合の各分子種のモル比(35Cl35Cl:35Cl37Cl:37Cl37Cl)として、正しいものを一つ選べ。
- 1:2:1
- 3:2:1
- 6:3:1
- 9:3:1
- 9:6:1
正解と解説
5 9:6:1
問題文より、35Cl:37Cl=3:1なので、35Clは3/4、37Clは1/4の確率で存在しているといえます。
ここから、35Cl35Cl = 3/4×3/4 = 9/16、35Cl37Cl = 3/4×1/4 = 3/16、37Cl35Cl = 1/4×3/4 = 3/16、37Cl37Cl = 1/4×1/4 = 1/16となります。
したがって、35Cl35Cl : (35Cl37Cl+37Cl35Cl) : 37Cl37Cl = 9/16 : (3/16+3/16=)6/16 : 1/16 = 9:6:1
で5が正解となります。